「くれったれ! 少年時代」 チャールズ・ブコウスキー著 訳:中川五郎なかがわ ごろう)氏

「くれったれ! 少年時代」
チャールズ・ブコウスキー著
訳:中川五郎なかがわ ごろう)氏
河出文庫
1999年12月3日初版発行
発行所 河出書房新社

チャールズ・ブコウスキーの作品に登場してくる主人公は、とにかく愚行を繰り返します。鯨飲し、喧嘩し、競馬場に足繁く通い、そして幾度も職を失います。作品自体のストーリー性は希薄で(短篇などそうではないものも多々ありますが)、この愚行が延々と描き続けられます。

辟易としてしまう読者もいるかと想像されますが、私は何故だか逆に惹かれてしまいます。その理由はしばらくわかりませんでしたが、ある方が、マステリーだ、ということを書かれておられました(どなたの何という本だっか、残念ながら記録をとっておりません。申し訳ないです)。マステリーとは、反復行動によって過去のショックの感情を癒し、和らげていく行為のことらしいです。

チャールズ・ブコウスキーにとって、過去のショックの感情とは何であったか、というと、父親から受けた虐待だったようです。「くれったれ! 少年時代」ではそれが克明に描かれています。この作品が自伝的要素の強い小説だといわれていますが、フィクションであるにしろ、ないにしろ、ブコウスキーの作品群を読むにあたっては、この作品は羅針盤的役割を果すのではないだろうか、と思います。

また、この作品においては、人間が成長を遂げていくプロセスもごつごつとした手触りで描かれており、私にとっては高級な文学作品といえます。ご一読をお勧め致します。

<余談>
映画「つめたく冷えた月」(パトリック・プシテー監督、原作:チャールズ・ブコウスキー)は、原作に負けず劣らず面白く鑑賞させて頂きました。

草壁丈二

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