集英社「戦争×文学」(全20巻+別巻1)の「満州の光と影」及びポプラ社「百年文庫」の「波48」に、
八木義徳氏の「劉廣福」(リュウカンフウ)が所収されています。
「劉廣福」は、第19回 昭和19年上半期)の芥川賞作品ですが、満州を舞台にして、劉廣福という中国人労働者を描いたものです。
この作品の手ごたえは、劉廣福という男の魅力だと断言できる、と思います。あくまでも推測でしかありませんが、八木義徳氏は、劉廣福の生命力に驚嘆し、まるで憑かれたように筆を進めたのではないでしょうか。そう推測するエビデンスとして、行間から劉廣福のエネルギーを感じざるを得ないからです。
そして、当時の満州の状況が垣間見られる、ということが、この作品の副産物でもあるわけですが、そういう所以で、「満州の光と影」に所収されたのだろう、と思います。また、この時代を描くに際して、非戦争体験者ではない、戦争体験者の独特の余裕が感じられます。
是非劉廣福という男の魅力を堪能して頂きたい、と思います。
余談になりますが、ご紹介致しました2冊の本には、「劉廣福」以外に素晴らしい作品が所収されていますので、小説の醍醐味が味わえるのではないでしょうか。
草壁丈二