「血と骨」-梁石日(ヤン・ソギル) 幻冬舎文庫

今日の推薦テキストは、梁石日氏の、あの「血と骨」です。

梁石日氏の作品群の中には、自伝的要素を含んだものがありますが、この作品も、その1つだろう、と思います。

主人公は、梁石日氏の父親と思われる金俊平。強靭な肉体を持つ魁偉な男。性格は、狡猾、残忍、凶暴、吝嗇。そして猜疑心に翻弄されて誰も信じることが出来ない。身内すら信じていない。

戦前の大阪の朝鮮人居住地域で、この金俊平は、家族を、世間を一切顧慮することもなく、己の欲望のおもむくままに女たちを陵辱し、極道たちをも粉砕してしまいます。その姿は、阿修羅の如し、といったところでしょうか。これほどまでに我欲に忠実であれば、却って清々しさすら感じてしまいます。

この力作の魅力・素晴らしさを伝えきれなくて、忸怩たる思いですが、個人的には、底知れず面白かった、ということは間違いない事実でした。

さらに、この作品では、戦前の朝鮮人の暮らしぶりや日本の社会における境遇を窺い知れることが出来る、というプラス要素もあります。

どうか、ヤンソギル・ワールドを満喫してください。

草壁丈二

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