朝鮮人強制連行(岩波新書 外村大氏著)

本書の特徴は、膨大な史料をベースにして、朝鮮人強制連行の実態(計画の策定から、動員の実態、そしてその崩壊まで)を理性に裏打ちされた冷静な姿勢で解明していき(本著に用いられなかった史料の方が圧倒的に多い、と推測されます)、本書からの引用になりますが、「マイノリティに不利な条件を押しつける国家や社会はマジョリティをも抑圧していた。そして、そのような状況をマジョリティが自覚し改善し得ずにいたことが、朝鮮人強制連行のようなマイリティに対する加害の歴史をもたらしたのである」という核心・本質に迫っていきます。

そして、「「朝鮮人強制連行の歴史は、”朝鮮人のために日本人が覚えておくべき歴史”ではない。それは、本書で述べてきたように、民主主義を欠いた社会において、十分な調査と準備をもたない組織が、無謀な目標を掲げて進めることが、もっとも弱い人々を犠牲にしていくことを示す事例として、奴隷的な労働を担う人びとを設定することでそれ以外の人びともまた人間らしい労働から遠ざけられるようになった歴史として記憶されるべきである。」(本書引用) 」と結んでいます。

正鵠を射た結論であり、懐疑を抱く余地が全くありません。

本書を読んたうえでの個人的な収穫の1つに、当時の統計資料から強制連行が始まる頃の朝鮮農村部の状況がわかったことが挙げられます。

最後になりますが、大変有意義な本でした。ご一読をおすすめ致します。

草壁丈二

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)