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ノンバーバルコミュニケーションの重要性

ネアンデルタール人が滅んだ1つの要因として、ホモサピエンス(現生人類)とは発声器官の構造が異なっていて多様な発声が出来なかったからだ、という説があります。ネアンデルタール人がどのような生活を送っていたかについては推測の域を脱し得ませんが、狩猟がメインだったと考えられているようです。狩猟においては、数人が1つの集団となって獲物となる動物たちを捕獲していたのでしょう。ネアンデルタール人がホモサピエンスのように多様な音を発することが出来れば、それが言語(バーバル)となり、獲物の居場所の伝達、捕獲方法の話し合い・情報共有などが可能となって、より効率的な狩猟が実現できたのかもしれません。ホモサピエンスに取って代われることはなかったのかもしれません。

無論、上述は仮説に過ぎませんが、仮説が正しいとすれば、バーバルコミュニーケョンがネアンデルタールの生存に関わるファクターであったといわざるを得ませんし、現代人の社会も言語によって成立しているといっても過言ではありません。

しかし、一方で、現在、ノンバーバル(非言語)コミュケーションの研究が盛んに行われています。アメリカの心理学者アルバート・マレービアン博士は、他者から取る情報については「顔の表情」55%、「声の質、大きさ、テンポ」38%、「話す言葉の内容」7%という割合である、という実験結果を発表していますが、「話す言葉の内容」は1割弱しか重みがないということになります。

ビシネスシーンにおいても、メールだけでのやりとりでは隔靴掻痒としてしまい、結局、会って打ち合せを開催するという事態が時々発生してしまいます。特に、初めて一緒に仕事をする相手との場合には頻発します。これは、コミュニケーションの土台となる基礎情報量(相手の思考パターン・言語表現方法の癖など)が決定的に不足しているからでしょう。

そういう意味では、メールでの絵文字は、情報量の少なさを補う現代人の工夫というべきか、苦肉の策なのかもしれません。

確かに、バーバルコミュニケーションは、ネアンデルタール人にとっては幻のツールだったかもしれませんが、今を生きている現代人にとっては、水と同様に必要不可欠です。しかしながら、インターネットの恩恵を受けている現代人は、バーバルコミュニケーションに頼りがちな社会環境にいるといえます。

が、どういった環境であれ、バーバルとノンバーバルがバランスよく並存してこそ円滑かつ深いコミュニケーションが図られ、ひいては、高度な仕事が達成できるのだと考えられますから、ノンバーバルコミュニケーションの研究は、インターネットマーケティングの世界においても、さらに重要度が増すことになると想定されます。

マーケティング・リサーチデータを鵜呑みにするな

マーケティング・リサーチ業界においては、「喫煙率と健康」という古典的な笑い話があります。あるリサーチャーが、喫煙率の高い対象者の方に「健康状態がよい」の回答比率が高かったという調査結果を受けて、「喫煙は健康によい」という結論を導き出してしまったという話です。健康だから煙草を吸える、という実態を完全に見落としていたのです。

この例に限らず、リサーチャーが調査結果を鵜呑みにしてしまう場合は多々発生します。卑近な例は、家電製品の開発です。
アンケートにおいて「欲しい機能」の一覧を作成し、yesかnoで対象者に回答してもらうとします。調査対象者としては、その機能が「ない」より「ある」方がいいわけで、当然yesの比率は高くなります。そして、その調査結果をベースに製品開発したとすれば、様々な機能が幾何級数的に付加されていきます。しかし、現実には、市場からは「機能が複雑で使いづらい」、「要らない機能が多過ぎる」という反応が返ってきます。また、ある住宅メーカーの役員は、消費者のいうことを聞いて住宅をつくると、消費者も作り手も到底納得できない厚化粧の家が出来てしまう、といっています。つまり、

「消費者側(アンケートに回答する側)は、アンケートの質問に対する回答に基づいた製品が最終的にどのようになるのか

という具体的な商品イメージを持てないのです。従って、アンケートの設問設計に腐心しなければならないのです。

さらに失敗事例を紹介します。
パッケージテストにおいて、デザインAは3%が「非常によい」、47%が「よい」、デザインBは15%が「非常によい」、20%が「よい」と評価されたとしましょう。経験の浅いリサーチャーは、positive比率の高いデザインAを選択しがちですが、実際市場に投入した場合、デザインBの方が人気を博する場合が往々にしてある。つまり、たいていの場合、

強烈に支持する層が多い方が「商品力がある」

といってよいでしょう。

笑い話の例にしても、調査結果の活用失敗事例にしても、リサーチャーの経験の浅さや能力の問題であることはいうまでもありませんが、リサーチから得られたデータの解釈というものは、読書と同じようなもので、調査手法が多様化したとしても(インターネットリサーチの利用など)、データの意味を深く読み取る技術と洞察力が必要なのです。そういうベースがなければ、リサーチャーとして消費者ニーズ主導型マーケティングはおろか消費者提案型マーケティングを語ることは出来ないと考えております。

マスコミ各社の世論調査結果で差異が出る要因

新聞社、テレビ局、通信社などが実施している世論調査、例えば、内閣支持率などは、調査結果が微妙あるいは大幅に異なることがありませす。その原因は、

・調査主体バイアスがかかる
・質問文が異なる
・回答肢が異なる
・サンプリング方法が異なる
・調査方法が異なる

などが主なものとして挙げられます。

「調査主体バイアスがかかる」については、マスコミ各社の知名度が高く、対象者がそれぞれの調査主体にイメージを形成しており、それがバイアスの要因になっているのではないかと推測されます。この仮説については、検証させるべきですが、かなりの費用がかかってしまいます。

「質問文が異なる」については、専門用語で「クェスチョネア」といいますが、質問で「支持しませんか? 支持しますか?」と順番を変えただけで調査結果に影響してきます。マスコミ各社が同じ質問文を使用すれば、いくぶん誤差は小さくなると考えられます。

「回答肢が異なる」については、「支持しますか? やや支持しますか? やや支持しませんか? 支持しませんか?」と4択に変えるだけで結果は異なってきます。日本人の場合、はっきり答えることを避けたがる傾向があり、やや支持、あるいは、やや不支持、というカテゴリーに回答が落ちやすいという特性があります。これも結果の違いになって表れてくるのでしょう。

「サンプリング方法が異なる」については、住民台帳や選挙人名簿からランダムに抽出された対象者に対して調査を実施すれば、調査精度は増しますが、マスコミ各社はサンプリング方法を公表していません。層化しているのか、していないのか、もわかりません。層化多段抽出法より単純無作為法の方が誤差は小さいですが、調査員による調査であれば、単純無作為法は現実的な方法ではありません。やはりマスコミ各社はサンプリング方法を公表すべきでしょう。

「調査方法が異なる」については、調査員による調査、電話調査、インターネット調査 が主な調査方法になると考えられますが、ここでは長々と書けませんが、それぞれの調査方法には特性というものがあります。この調査方法についても、マスコミ各社は公表すべきでしょう。

最後に

マスコミ各社による世論調査の結果に差がある場合は、全部の調査を時系列(タイムシリーズ)で見て、それで「支持率は下がっているようだ」「上がっているようだ」というような見方をした方がよいのではないでしょうか。因みに、50%辺りの数値が最も誤差が大きい、というこを補足しておきます。

<世論調査・社会調査を研究するうえでの推薦図書>