1.消費動向調査とは
「消費動向調査」とは、内閣府が実施している、「今後の暮らし向きの見通しなどについての消費者の意識や各種サービス等への支出予定、主要耐久消費財等の保有状況を把握することにより景気動向判断の基礎資料を得ることを」*1目的としたサンプリングによる世帯調査です。つまり景気の動向を判断するための調査ですが、統計法によって指定された「指定統計」ではなく、「一般統計」なのです。
*1 「」内は、内閣府HPより引用
2. 調査される項目について
「調査される項目について」記述する前に調査の概要を把握しておく必要がありますが、調査対象は全国の全世帯約5,000万世帯です(N=約5,000)。その中から8,400世帯が無作為に抽出されます(n=8,400)。対象となる世帯は、2人以上の世帯、単身世帯ごとに市町村→調査単位区→世帯の3段で抽出されます。また都道府県別に抽出率が均等になるように国勢調査の都道府県別世帯数に基づいて標本数を割り振っています。調査対象となる確率を大雑把に計算すると、8,400/5,000万(0.000168)で、対象者になる確率は非常に低いといえます。
調査対象になった場合は、15ヵ月間継続して協力する必要があります。最初は、内閣府が調査実施を委託した民間事業者の調査員が世帯を訪問して調査協力を依頼して、協力の承諾を得られれば、調査票を配布・回収します(訪問留置法)。以降、調査票が郵送され、郵送で回収されます(訪問留置法から郵送法にシフト)。
以上が大まかな調査の流れとなりますが、調査項目は、以下のように分類されます。
(1)消費者の意識(今後の暮らし向きの見通し) ←毎月の設問です
(2)物価の見通し ←毎月の設問です
(3)自己啓発、趣味、レジャー、サービスなどの支出予定 ←6、9、12月及び3月の設問です
(4)主要耐久消費財等の保有・買替え状況 ←3月のみ設問です
(5)世帯の状況 ←毎月の設問です
注)平成25年時点で「旅行実績・予定」という調査項目は廃止となりました
- 消費者の意識(今後の暮らし向きの見通し) については、「今後半年間」の暮らし向きや世帯収入、雇用環境、耐久消費財の買い時、株式・土地の価値の見通しを対象世帯に回答してもらいます。
- 物価の見通しについては、1問のみで、今後1年後に世帯で日ごろ購入する品物が「下がっているか」「変わらないか」、「上がるか」を回答してもらいます。
- 自己啓発、趣味、レジャー、サービスなどの支出予定については、自己啓発、スポーツ活動、文化的催しの鑑賞、娯楽施設等の利用、外食、家事代行サービスについての金銭支出を増やす予定か、減らす予定か、を回答してもらいます。
- 主要耐久消費財等の保有・買替え状況については、対象世帯で保有している乗用車、ルームクーラー、パソコンなどの耐久消費財の保有状況を回答してもらい、耐久消費財の買替えがあったものについては、その理由と買替え前に使用していたものの使用年数を回答してもらいます。
- 世帯の状況については、世帯人員、世帯就業者数、世帯全体の年収、住宅の種類や広さ、ローンの有無などの世帯の基本的な属性を回答してもらいます。つまり分析の軸となる設問群です。
3. 実際に調査が行われる際の流れ
「2. 調査される項目について」で少し触れていますが、調査全体のフローは、
・標本設計
↓
・標本設計に基づいた標本抽出(調査対象世帯の抽出)
↓
・対象世帯への調査員訪問(調査協力依頼)
↓
・対象世帯の調査票記入
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・調査員による調査票回収
(調査員による回収は1回目のみで、以降15回目まで調査票は郵送送付・郵送回収に切り替わります)
↓
・対象世帯は毎月10日前後に郵送されてきた調査票に記入してから返送
*調査票に記入する内容は毎月15日現在のことを基準としています
↓
・毎月20日頃までに届いた調査票を集計
*残りの13回は、この繰り返しということになります。
4. 消費動向調査の注意点~もし対象世帯に選ばれたら~
既述していますように消費動向調査の対象世帯になる確率は0.068%と非常に低い確率ですが、常に選ばれる可能性はあります。対象者として抽出された場合の注意点は、15ヵ月という長い期間の協力が必要となってくることです。これは、調査対象世帯を15のグループに分けて、1ヵ月ごとに1グループが入れ替わっていき、15ヵ月ですべての対象世帯が入れ替わるような標本設計に起因しています。 その他の注意点としては、この消費動向調査は、世帯調査であり、個人調査ではないということです。世帯の耐久消費財の保有・買替え状況は世帯の実態情報として受け取られますが、(1)消費者の意識(今後の暮らし向きの見通し)、(2)物価の見通し、(3)自己啓発、趣味、レジャー、サービスなどの支出予定については、基本属性が不明な世帯主以外が回答する場合が生じる、ということをあらかじめ認識しておくべきでしょう。