定量調査と定性調査を組み合わせる手法で得られるメリット

1.定量調査とは
定量調査(Quantitative Survey)とは、最終的な調査結果が数値として表され、かつ、その数値が統計学的に見て意味を持つ調査のことです。大別すると、仮説を検証するための仮説検証タイプと定量的なデータ(数値)を得るために行うタイプがありますが、「量的調査」と呼ぶ場合もあります。

2.定量調査でとらえきれない細部
定量調査は、多数の調査対象者に、代表性を保持するため全く同じアイテム・カテゴリーで質問します。多くの場合、ペーパーの調査票・PC上の画面利用によるプリコード式のカテゴリー提示型になりますが、順序効果を排する手法、純粋想起、助成想起、強制選択尺度などの調査票・調査画面を作成するうえで様々なテクニックがあります。

しかし、プリコード式においては、強制選択尺度のように微妙な差異を捉えられない場合があります。例えば、「はい」、「いいえ」、「どちらともいえない」という選択肢があるとした場合、強制選択尺度においては、強制的に「はい」あるいは「いいえ」が選択され、「どちらともいえない」は選択されませんが、実際のマーケティングリサーチにおいては、「どちらともいえない」と思っている消費者心理が重要になってくる場合が多々あります。


以上は強制選択尺度における事例ですが、定量調査における調査対象者には、満足度調査などの評価調査や意識調査では、プリコードされたカテゴリーから選択せざるを得ない、という状況があり、このことが実態との乖離を生む要因になる可能性があります。また、「日本人の場合、極端な意見を避けたがる傾向がある」「本音ではなく建前を回答しやすい」といわれていますが、このような実態との差異は、定性調査で、把握あるいは補う必要があります。

定量調査のウィークポイントを補完する定性調査には、グループインタビュー、デプスインタビュー、行動観察法などありますが、定性調査を実施する場合は、定量調査の調査結果を再解釈できるもの、また、定量調査では見落としてしまうような事実を発見できるような内容にすべきでしょう。例えば、購入プロセス調査などは、購入現場に足を運んで、初めて「どうして、そういう買い方をするのか」という原因を突き止められるケースがあります。購入現場を観察する、という行為も定性調査の1つなのです。
つまり、定量調査と定性調査は対立するものではなく、相互に補完し合う関係にあるのです。過去の具体例として、冷蔵庫の幅が挙げられます。定量調査では「冷蔵庫の幅に不満」の割合が徐々に増える傾向にありましたが、原因を特定することが出来ませんでした。しかし、グループインタビューに参加した主婦の方から「マンションの冷蔵庫を置く場所に、販売中の冷蔵庫に入らない」という意見が出て、やっと原因が特定できたのです。年々不満の割合が増えたのは、マンション居住者が増加していたからだったのです。これは、定量調査と定性調査がうまくかみ合った好例です。

3.定量調査の前の定性調査
定量調査を実施する場合、その調査テーマに関する知識・基礎資料・手がかりなどが全くない場合、

(1)グループインタビューやヒアリング調査などを行って、ある程度の知識を得たり、方向性を決めたりする
(2)プリテスト用の調査票を作成し、プリテストを実施する
(3)プリテストから得られた課題・問題点を基に調査設計や調査アイテム・カテゴリーを修正して、本調査に臨む

という段階を踏んでいきますが、実際は、予算・スケジュール等の関係や過去の調査実績が蓄積されているなどの要因で(1)(2)は省かれるケースがほとんどです。

しかし、定量調査を実施する前には極力定性調査を実施すべきでしょう。というのも、定量調査で得られた調査結果の分析・解釈に、定性調査の調査結果は非常に役に立つからです。

4.組み合わせることで得られる答え
「2.定量調査でとらえきれない細部」「3.定量調査の前の定性調査」で既述してように、定量調査と体調査は相互に補完し合う関係にあります。それぞれのウィークポイントを補完し合っているのです。定量調査は統計学的な裏付けのある代表性はありますが、代表性においては、プリコード式が多いため、細部が見逃されるケースがあります。
一方、定性調査では、仮説を立てたり、調査のベースとなる知識を得たり、微妙な消費者の本音や心理を発見するにうえでは有効な手段ですが、代表性がありません。つまり、どちらが優れているという問題ではなく、一長一短があるということなのです。つまり、定量調査と定性調査をうまく組み合わせることによって、ソリューションを可能にしたり、仮説を検証したり、消費者の実態・心理などを正確に把握したりできるということなのです。

現状、定量調査、定性調査のいずれかに特化したリサーチ機関も多いようですが、「うまく組み合わせる」ことを実現するためには、定量調査と定性調査の両方の知識・経験が必要です。しかし、個人ベースで両面のスペシャリストになることは容易なことではないので、非専門分野のスペシャリストの意見を傾聴し、考え方も尊重すべきでしょう。

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