アンケート調査を効果的に活用するために確認しておくべきこと

1.アンケートとは
「アンケート」とは、そもそもフランス語で、「実査活動を伴う調査」という意味ですが、日本では、調査票を使った調査全般を「アンケート」と呼ぶようになり、それが浸透して、一般化しています。

2.アンケートのメリット・デメット
(1).調査票作成方法によるメリット・デメット
アンケートの調査票は、アイテム・カテゴリーから成り立っています。アイテムとは、質問項目のことで、カテゴリーとは、回答項目のことです。多くのアンケートは、事前に回答項目が作成されていますが、これはプリコード式と呼ばれています。一方、質問項目に対して、調査対象者に自由に答えてもらい、その回答を分類して、カテゴリー化することはアフターコード式と呼ばれています。
プリコード式のメリットとしては、性別、年齢、住居形態、居住年数、居住地域といったような実態を把握するためには有効です。データの入力処理が容易になるからです。しかし、対象者の意識といったような場合、あらかじめ用意された回答項目のいずれかに入ってしまう危険性が潜んでいます(これは「バイアス(ここでは偏りという意味で使用)」と呼ばれている現象ですが、「バイアス」については、調査主体名バイアス、回答項目の順序効果バイアス、回答への助成想起バイアス、調査員バイアスなど様々なバイアスがあります)。

一方、アフターコード式のメリットは、自由回答(フリーアンサー=F.A.、オープンアンサー=O.A.と呼ばれています)が基本となりますので、調査対象者が自由に回答した意識などが吸収できるということが挙げられます。しかし、対象者の回答を全部読んで、カテゴリーに分ける、という膨大な作業が発生するというデメットがあります。また、アンケート内容に興味がない調査対象者から回答を引き出すことはなかなか難しいのです。このような事態を支援するために「プロービング」(答えるが出るように追求して質問すること)という回答を引き出す調査テクニックがあるくらいなのです。

プリコード式とアフターコード式のメリット・デメットを指摘しましたが、アンケートを作成する場合には、まず、質問項目の性格を吟味して、プリコード式にするか、あるいは、アフターコード式にするか、を決める必要があります。

(2).サンプリングのメリット・デメット
調査票作成段階においても、様々なメリット・デメットがありますが、アンケートの基盤はサンプリングです。アンケートは、母集団から無作為に一部を選んだ対象者の回答から、母集団全体を知ろうとするもので、ほとんどのアンケートではサンプリング(無作為抽出。ごく1部で有意抽出があります)が行われています。国勢調査のような国民全体を調査する悉皆調査は非常に稀なのです。

当然、サンプリングは、全数を調査する必要がありませんので、莫大なコストがかからないというメリットがあります。しかし、サンプリング誤差が生じてしまいす。例えば、「はい」という回答した比率は10±5%の間にある確率が95%といったような誤差です。誤差はサンプル数が少なければ少ないほど大きくなります。これはデメットですが、サンプリングを行った場合、「常に誤差がある」ということを認識して分析しなければなりません。

(3).調査員によるアンケートのメリット・デメット
郵送調査の活用、インターネット調査の普及によって、「コストや時間がかかる」というデメットのある調査員による調査は減少傾向にあります。が、一方で、調査員による調査は、調査票の回収率が郵送法よりも高くなるというメリットがあります。また、近年、増加しているミステリーショッパー(覆面調査)は、調査員に頼らざるを得ません。しかし、調査員の質を均一にすることは非常に困難です。ミステリーショッパーにおいては、調査の客観性を保持するために工夫に工夫を重ねているのが現実です。また、「(1).調査票作成方法によるメリット・デメット」で少し触れましたが、プロービング技術が調査員によって違ったり、各調査員が持つ独特の癖の違いもあったりするため、均一化する教育が必要となってきます。また、調査員と対象者との相性によるバイアスも発生しますので、調査員と対象者がラポール(親和関係)を素早く築いていくテクニックも習得してもらわなければなりません。

3.アンケートの種類とその違いによるメリット・デメット
調査手法は、調査する対象によって最適の手法を選ぶ必要があります。例えば、「世帯の消費額や世帯年収を知りたい」を調査したいということであれば、インタビュー法より留置法が適している、というようなことです。
以下は、主に定量的データ(数値や量のデータ)で分析するデータ)を知りたい場合の表的な調査方法です。
・個別訪問によるアンケート(インタビュー法、留置法など)
・郵送法によるアンケート
・電話によるアンケート
・インターネットによるアンケート
・街頭調査(インターセプト法)
・CLT(セントラル・ロケーション・テストの略で、ホールテスト、会場テストともいいます。会場に調査対象者を集めてアンケートを実施する方法のことです)

以下は主に定性的(あるいは質的)データを収集するための代表的な手法です。
・グループインタビュー
・デブスインタビュー(深層面接法のことで、対象者の潜在意識を探ることを目的としています)
・ミステリーショッパー(いわゆる覆面調査のことです。訓練を受けた調査員が身分を隠して、実際に商品を買ったり、サービスを受けたりして、その際の店舗内の様子、従業員の態度など評価するというものです)
・行動観察法

以上が代表的な調査方法ですが、主に定量的データを調査する場合の特徴(メリット・デメット)を表にまとめてみました。

「主に定量的データ」を調査する場合の特徴(メリット・デメット)

調査の手法コスト調査に要する時間       調査精度    補 足 説 明
インタビュー法××調査精度を最優先させたい場合に非常に 有効で、その点は大きなメリットとなります。しかし、かなりのコスト・時間が必要になるというデメットがあります。
留置法××調査員によってアンケートに回答した対象者を目視確認できないというデメットがあります。調査結果がインタビュー法よりクリアな差が出ないというデメットもあります。
郵送法×留置法と同様にアンケートに回答した対象者を目視確認ができない、また、回収率が悪くなるというデメットがあります。
電話法長時間の調査に不向きだというデメットがあります。拒否率も高く、クォータを設定している場合、回答を得にくい年齢層が出現します。
インターネット法無作為抽出でサンプリングが行われていないケースの場合、「代表性」という点において、統計学的な裏付けがないというデメットがあります。しかし、補正技術が研究されて、その課題は徐々に解決されているようです。
街頭法調査結果に、代表性がある、とはいい切れないというデメットがあります。しかし、ほぼ実態に近い結果が得られていると推測されます。
CLT街頭調査と同様に、代表性がある、とはいい切れないというデメットがあります。しかし、ほぼ実態に近い結果が得られていると推測されます。
注:◎は非常によい ○は「よい」 △は「やや悪い」 ×は「悪い」 という意味です。

以上、アンケートの種類によって、特徴は異なってきます。まずは、「何を調査したいのか」という目的を明確にしたうえで、アンケートの種類(調査方法)を決めていかなければなりません。しかし、アンケートを実施する前に「セカンダリーデータを収集して、対象者に関する情報を得る」というステップが必要になってきます。セカンダリーデータとは、「他の目的のためにすでに収集されたデータのこと」を意味しますが、総務省統計局、国土交通省、厚生労働省、内閣府などの国や地方自治体が収集したデータを有効に活用し、その結果、「アンケートを実施しなければ、目的のデータが得られない」ということであれば、その際に、アンケート実施に踏み切るべきです。アンケート実施には、かなりのコストがかかるのです。
さらに最近「ビッグデータ」を活用する動きが活発化しているようですが、ビッグデータの活用でアンケートを実施する必要がなくなる領域も出現してくることでしょう。

5.アンケートの活用事例
アンケートは、数限りなくありますが、主に、国、地方自治体、企業が主なアンケートを実施する主体者です。
企業に焦点を当てると、主にB to C(Business to Consumer)企業において、消費者のニーズ、ウォンツ、満足度などを知るためにアンケートを実施しています。コンビニでは、レジで消費者の年齢・性別を購入品と紐付けて、データを入力し、販売戦略に役立てています。デパート、スーパー、量販店などでは、クレジットカードやポイントカードのデータを基に商圏を調べたり、コンビニと同様に販売戦略を練ってたりしています。しかし、このようなデータのみでは、消費者のニーズ、ウォンツ、満足度などいった定性的(あるいは質的)データを捉えることに困難があります。そこで、アンケートの出番となります。

(1).事例1…スーパー、量販店における消費者満足度調査
お買い物に来た消費者が何を買ったか、については、データが取れますが、品揃え、店舗内の清潔度、店員の接客態度などに対する消費者の満足度といった定性的(あるいは質的)なデータを捉えることは出来ませんので、アンケートへのニーズが出てきます。調査員を介して商品購入後の消費者に満足度などをインタビューすることは、有効な活用方法といえます。

(2).事例2…イベントなどの参加者の満足度測定及び今後の要望把握
コンサート、展示会、講演会、フォーラムなどへの参加者の満足度や今後の要望などをリアルテイムで把握することは、次回の開催する際の課題発見、当日中に修正すべき点発見に有効です。スマートフォンにアンケート画面を出して、リアルタイムで来場者に満足度・要望などを回答してもらうことは、非常に有効な活用方法です。

6.最後に
AIやIT技術を駆使して、人間の行動、表情等から感情を読み取る手法が確立しつつあります。例えば、買った物、お店等に対して好感を持ったのか持たなかったのか、測定できるようになったのです。アンケート調査も大きく変わっていくのだろうと推測されます。

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