標本調査で欠かせない無作為抽出と有意抽出の見分け方

1.無作為抽出とは

無作為抽出とは、最も簡潔な言葉で表現するなら、「くじ引きで対象を選ぶ」ということになります。つまり、母集団の中から、アットランダム(at random)に調査対象を選び、かつ、選ばれる確率は、どの調査対象も等しくする、ということで、ランダムサンプリング(random sampling)とも呼ばれています。あるいは確率抽出法(probability sampling)とも呼ばれています。

2.一見無作為抽出に見える有意抽出

無作為抽出法による調査は、政府、地方自治体、公益団体が実施している世論調査など代表的なものですが、無作為抽出法の対極にあるものが有意抽出法(purposive selection)です。英語のpurposiveを訳せば、わかるように「目的にかなったサンプリング」です。有意抽出法の代表例は、街頭でインターセプトされて実施されている街頭インタビューや街頭リクルート調査が挙げられます。一見すると、無作為に対象を選んでいるようですが、対象を選ぶ場合、性別、年齢、職業などいったスクリーニング条件がありますので、無作為抽出法とはいえません。従って、代表性がある、とはいいきれず、「代表性がある可能性は高い」としかいえないのです。この街頭インターセプトによる調査以外には、人名リストの中から対象を選んで調査する場合も、有意抽出法といえます。これら街頭インタビューや人名リストを使用した場合の抽出法は、便宜的サンプリング(convenience sampling)と呼ばれています。またインターネット調査も有意抽出法のケースが多いと想定されます。登録モニターの中から条件に合う対象を抽出していれば、便宜的サンプリングになるからです。しかし、住民台帳や選挙人名簿からランダムサンプリングによって対象を選んでインターネットで調査を行った場合は、無作為抽出法による調査であり、「代表性がある」といえます。

ところで、無作為抽出法は1種類しかないというわけではありません。例えば、単純無作為法は、調査員調査において調査地域が狭い場合に有効です。例えば、小さな市町村や集落などでは非常に有効となります。この単純無作為法を簡単に説明すると、住民全員が等しい確率で選ばれるようにインターバルを決めて抽出していく、という方法です。系統抽出あるいは等間隔抽出とも呼ばれています。例えば、1万人が居住する町で、1,000人を抽出する場合、インターバルは10になりますが、インターバル10は、実際、現地にいってみればわかりますがだいたい3軒置きくらいになり(地域特性によっても異なりますが)、調査員は効率的に稼働できます。しかし、調査地域が全国とか都道府県内全体という具合に広域になる場合、2段無作為抽出法を用います。この2段無作為抽出法を簡単に説明すると、第1段階で、調査地域内で調査地点を系統抽出し、第2段階で、その調査地点で、さらに等間隔で対象を抽出していく、という方法です。この方法ですと、調査員の調査地域の範囲が狭くなり、効率的な稼働が可能となります。しかし、調査地域をブロック別やエリア別で層化するケースがほとんどなので、層化2段無作為抽出法として活用されるケースがほとんどです。しかし、単純無作為法よりサンプリング誤差が大きくなります。

3.サンプルは何人必要となるか

調査を設計する際、標本数(サンプル)は非常に重要な要因となります。まず、どこまで分析するのか、あるいは、分析したいのか、という着地点が見えてなければなりません。性別・年齢10歳階級別まで分析が必要ということであれば、年齢を6つのカテゴリーに分けた場合、性別の2×年齢階級別の6=12カテゴリーになります。各カテゴリーの分布が統計データとして活用可能最低サンプル数は100s以上といわれますので、1,200sは必要となります。しかし、回収率が5~6割だとすれば、それを見込んで、

1,200s×10/5~6 = 2,000~2,400s

は必要ということになりますが、2,000~2,400sの調査を実施するとなれば、かなりのコストと時間が必要となります。代案としては、各カテゴリーが30s以上あれば、統計的な数値として安定してきますので、各カテゴリー30sとして分析する、といった割り切り方も出来ます。つまりサンプル数は、どこまで分析したいのか、予算はどれくらいあるのか、という妥協点を視野に入れつつ決められいるのが実情といえます。しかし、最もnが小さくなるカテゴリーにおいて30s以上確保できるように標本設計すべきでしょう。

4.無作為抽出が必要となる調査の種類

これまで記述の中で、既にいくつか無作為抽出を用いる調査を紹介していますが、国、都道府県、市区町村が行う世論調査は無作為抽出が原則といえます。実際に県民アンケート、市民アンケートといったようなものは、ほとんどが無作為抽出で実施されています。無作為抽出法による世論調査は、住民の意識、実態などを把握する場合に有効な手段なのです。これらの国や地方自治体が行う世論調査は、企業も参考資料として大いに活用すべきでしょう。

次に特異な例となりますが、施設などの来場者調査において、来場者に性別・年齢別などのクォータを付けずに、来場者を「○○人置き」(等間隔で)に調査するという系統抽出を取り入れた方法もあります。この方法であれば、ランダム性が保持できて、調査日の「全来場者」という母集団が推定できるというメリットがあります。

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